日照権が侵害された時の対処法4つと侵害されないための法律知識まとめ

弁護士法人ネクスパート法律事務所
監修記事
日照権が侵害された時の対処法4つと侵害されないための法律知識まとめ

人間の生活において太陽が当たらないというのはとてもよくないことです。洗濯物が乾かないことはもちろん、暗い部屋だと精神的にも滅入ってしまいます。

では、日照権が侵害された時どのように対処していったらよいのか、侵害を予防するためにできることは何かを判例や日照権に関わる建築法の制限と一緒にまとめました。また実際に起こった日照権に関する判例も見ていきましょう。

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日照権侵害の判例

日照権侵害の判例

まずは、何が日照権の侵害になるのか説明するうえで、日照権の侵害が認められた判例と認められなかった判例をご紹介します。

日照権の侵害が認められた判例

平成13年12月14日 広島県 建物一部撤去等請求控訴事件

【裁判内容】3階建てに住むマンションの隣地に住居する原告が、日光権侵害を理由に建物の一部の撤去と慰謝料の支払いを請求した。

【判決】

  • 建物の一部を撤去
  • 撤去するまでの間1ヶ月金3万円の支払
  • 損害賠償60万と損害賠償が払い終わるまで年5分の利息を支払う
  • 裁判費用の5分の4を被控訴人の負担とする

(参考:裁判情報例)

平成14年11月18  損害賠償等請求控訴・同附帯控訴事件

【裁判概要】2階建ての建物の隣地に住居する控訴人ら4人が日照権侵害を理由に、建物の一部撤去及び慰謝料の支払いを求めた。

【判決】損害賠償として、各200万円の支払い

参考:裁判情報例

認められなかった判例

平成23年12月14日 総合設計許可処分等取消請求控訴事件

【裁判概要】近隣に事務所を構える宗教団体・住民が建築物の建設許可の取り消しを、景観被害や高さの規制違反などから求めた

【判決】原告の主張は具体的な権利ないし法的利益を侵害していないためこれを棄却する

参考:判例情報

平成22年10月5日 損害賠償請求事件

【裁判概要】マンションの建設工事に伴う騒音被害につき不法行為に基づく損害賠償の請求と、景観権利・日照権の侵害・プライバシー侵害を理由に損害賠償の請求・建物の一部撤去を求めた

【判決】

  • 騒音被害による賠償金の支払い
  • 日照権の侵害や一部撤去は具体的な権利ないし法的利益を侵害していないので棄却とする

(参考:判例情報)

 

日照権の侵害問題は建築基準法による3つの規制が関わる

日照権の侵害問題は建築基準法による3つの規制が関わる

日照権は建築基準法により地域区分され、その地域に合わせた高さの制限をしています。ではどのように地域区分をして、高さの制限をしているのか見てみましょう。

住居地域と商業地域

普段何気なく住んでいる地域が細かく分かれていることを知っていますか。これにより、高さや建てることのできる施設が決まっていきます。

日照権の侵害を訴える場合、隣地がどの地域に区分されているか知っていなければなりません。ここでは住居地域と商業地域をまとめたので詳しく見ていきましょう。

住居地域

地域区分 建てることのできる施設
第一種低層住居専用地域 ・低層住宅や日用品販売店・喫茶・小さな事務所などのための地域・絶対の高さ制限(10m又は12m)が設けられている。
第二種低層住居専用地域 ・主に低住層のための地域・150m2までの一定の店などが建てられる・絶対の高さ制限(10m又は12m)が設けられている
第一種中高層住居専用地域 ・中高層の住宅のための地域・病院・大学・500mまでの一定のお店などが建てられる・絶対の高さが決まっておらず、地区ごとで違う
第二種中高層住居専用地域 ・主に中高層の住宅のための地域・1500mまでの一定のお店や事務所など必要な利便施設が建てられる・絶対の高さが決まっておらず、地区ごとで違う
第一種住居地域 3,000m2以下の店舗・事務所・ホテルなどが建てられる・絶対の高さが決まっておらず、地区ごとで違う
第二種住居地域 ・店舗・事務所・ホテル・カラオケボックスなどが建てられる・絶対の高さが決まっておらず、地区ごとで違う
準住居専用地域 ・自動車関連施設が建てられる・自動車関連施設などの立地と調和した住居環境を保護する

商業地域

近隣商業地域 ・周りの住人が日用品を買える・住宅や店舗・小規模な工場・展示場・運動施設・畜舎を建てられる
商業地域 ・住宅や小規模の工場のほかに、銀行・映画館・飲食店・百貨店などが集まる・風俗店なども建てられる

(参考:建築基準法)

自分がどの地域に住んでいるかが分かりましたか。ではその区分によって定められている制限や規制を見ていきましょう。

北側斜線制限

斜線制限は、風通しや採光などに支障がないように各部分の高さを制限するためのものです。

中でも、北側の日照権を確保するため大切な規制を北側斜線と言います。どのように決まっているのかが分かりやすいように図にまとめました。

北側斜線制限

図の左側

第一種、第二種層住居専用地域の高さ制限になります。各部の高さは、隣地境界線の反対側から隣地境界線までを真北方向に結びます。

隣地境界線から真上に5mのところから勾配1.25の空間を除く(この時斜線になった部分を北側斜線という)図の斜線部分以下の空間に制限されています。

図の右側

第一種、第二種中高住居専地域の高さ制限になります。各部の高さは、隣地境界線の反対側から隣地境界線までを真北方向に結びます。

隣地境界線から真上に10mのところから勾配1.25の空間を除く(この時斜線になった部分を北側斜線という)図の斜線部分以下の空間に制限されています。

ただし、日影による建築物の高さ制限がある場合は北側斜線が適用されないので覚えておきましょう。

(参考:「高さ制限(④.北側斜線)」の解説)

日影規制

日影規制は中高層の建築物の高さを制限するために地方公共団体が決めてい規制で下記の2つが条件です。

  • 冬至の午前8時から午後4時までの間
  • 敷地内境界線から水平距離5mを超える範囲

上記に定められた高さの水平線に日影を落とす時間が、日影時間未満になるように建物の高さが制限されます。詳しくはこちら「(3)日影規制」をご覧ください。

日照権を侵害された時の4つの対処法と受忍限度

日照権を侵害された時の4つの対処法と受忍限度

日照権を侵害されたと思った時はどうしたらいいのでしょうか。ここでは4つの対処法と、人の我慢できる受忍限度はどのくらいなのかをまとめました。

建築紛争調整

建築紛争調整とは、当事者同士で話し合っても解決に至らなかった場合、都道府県が間に入り解決に導くためにサポートしてくれることを言います。

ではどのような順番とサポートがあるのか見ていきましょう。

当事者間の話し合い

まず当事者同士で話し合います。またその時大切なのはお互いの立場を尊重し、互譲の精神をもって自主的に解決するという心構えです。

当事者間での話し合いで解決しない場合次の段階に進みます。

あっせん

当事者間で解決しない場合は紛争調整申出書を知事に提出することであっせんが開始されます。

あっせんとは、当事者双方の主張の要点を確かめ、助言や資料を提供することなどのサポートにより、紛争の解決に協力・導くことです。

あっせんが開始されると、当事者は通知された日時・場所に出頭し、約2時間の非公開の手続きが行われ終了しない場合は次回に持ち越されます。

あっせんで紛争が解決すると当事者は和解書等を取り交わします。また紛争解決の見込みがない場合は打ち切り、調停を開始させます。

調停

調停は、当事者からの申し立てがあった場合のほか、あっせんを打ち切った後に知事が必要と認め、原則当事者が受諾した場合にも開始されます。

調停は調停委員会という法律・環境・建築の3人の専門家で構成している知事の委嘱した機関が間に入り話し合います。

また当事者が調停案を受諾しない・調停を続けても合意の見込みがない場合、知事は調停を打ち切ることができます。

あっせんや調停には費用がかかりません。ですがこの2つは話し合い解決を目的としているので、賠償金などの金銭解決がしたいときは利用できません。

建築確認と審査請求

建築確認

建築確認とは、建築物の新築・増築・改築にあたり建築基本法等などに適合しているかどうかを確認する制度です。

これらは着工前に義務として行われ違法でないとされた場合建築許可処分がされ、工事が行われます。

建築審査会に対する審査請求

建築確認の許可処分などに不服がある場合やこれによる申請を行ったのに改善処分や何かしらの対処が行われない場合に、市町村又は都道府県の建築審査会に審査請求することができます。

審査請求されると建築審査会で審理が行われます。これにより違法や不当と判断された場合、建築確認の許可処分の取り消しが行われます。

またこの請求には期間があり、許可処分があったと知った翌日から起算して3ヶ月以内にしなければいけません。また許可処分から1年が過ぎると請求できなくなります。

民事調停

民事調停の概要

調停は話し合いによりお互いが同意することで紛争の解決を図るための手続きです。

調停で一般市民から選ばれた調停委員(一般市民の良識を反映するために豊富な知識や経験・専門知識を持つ40歳から70歳の人の中から選ばれます。)が裁判官と共に紛争の解決にあたります。

さらに詳しくはこちら「民事調停について|裁判所」をご覧ください。

民事調停の5つのメリット

費用が低額

裁判所に収める費用が訴訟よりも低額になります。

手続きが簡単

簡易裁判の窓口にある申出用紙に記入すればいいので自分1人で行うことが可能です。

早く解決できる可能性が高い

ポイントを絞った話し合いのため比較的早い段階で解決します。通常申立てがされて2,3回の調停期日が開かれ、おおむね3ヶ月以内に調停が成立することが多いです。

円満な解決が望める

当事者双方の話し合いで行われるので、実情に合わせて円満な解決にたどり着ける可能性が高まります。

秘密が守られる

非公開の席で行われるので、安心して事情を話すことができます。

訴訟

建築が始まっている・話し合いではどうにもならない・慰謝料を請求したい場合に訴訟を起こし強制的に判断を求めることもできます。

受忍限度の判断

受忍限度とは我慢の限界のことです。また人それぞれにより感じ方は違うので、都道府県や市町村が基準を決めています。

日影になってしまう場合、時間や範囲を細かく調べておきましょう。1m2が日影になる場合と20m2が日影になる場合では被害の大きさが変わってきます。

また地域性や住んでいた長さ・加害者の交渉態様・被害者との関係性などいろいろな角度から判断され、裁判の判決に反映されるのです。

地役権の登記をして日照権侵害によるトラブルを防ぐ

地役権の登記をして日照権侵害によるトラブルを防ぐ

日照権を侵害されて話し合いや裁判になると大変ですよね。ここではその前にできる対策をまとめました。

地役権とは

地役権とは他人の土地を自分の都合で利用することができる権利のことを言います。たとえは。

他人の土地に高いものを建てない、他人の土地を通行するなどです。もっと詳しく知りたい方は「民法第280条」をご覧ください。

地役権の設定

これらは当事者間での合意の元成り立つものなので、設定内容は自由です。例えば、高さ制限や一部の場所7mには一切建築しない等、またそれに見合う定期的な支払金額も設定します。

地役権の登記

当事者間で約束した後に、法務省に登記することをお勧めします。登記することのよい点は、相手の土地の所有者が変わった後でも権利を受け続けることができることです。

登記していないと排除されてしまう場合があります。登記の仕方や用紙はこちら「不動産登記の申請書様式について|法務省」をご覧ください。

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まとめ

いかがでしょうか。判例からわかるように日照権は、具体的な侵害状況がないと棄却されてしまいます。

また建築するにあたり様々な制限が設けられています。お互いが心地よく快適な生活ができるように、建築する際は制限に気を付けましょう。

また何か起きないように狭い土地では特に地役権設定をしておくのもいいかもしれません。

【関連サイト】

日照権の阻害で請求できる補償と損害賠償の方法
日照権を隣のマンションに侵害された時の対処法

 

ここまでの日照権についての記事を読んで

  • 「うちの場合は日照権が侵害されていると法的に認められるのだろうか」
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2016年1月に寺垣弁護士(第二東京弁護士会所属)、佐藤弁護士(東京弁護士会所属)の2名により設立。遺産相続、交通事故、離婚などの民事事件や刑事事件、企業法務まで幅広い分野を取り扱っている。

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